15のチルドレン -Secret End-


「だけど」

秋本はまだ隠せぬ不安を俺に見せて、小さく吐息をつく。


「坂本が帰ることで、未来は変わるのかしら?
例えばよ、坂本が帰るとするじゃない? そうすると失踪事件や15年間捜していた私達の行為もおじゃんってことになるでしょ?」


「後者についてはおじゃんなんて言うなよ。虚しくなるから」


「本当のことよ。坂本が帰ることで未来は変わるかもしれない。
だけど、今此処にいる私達はどうなるのかしら?
まったく違う人生を歩んでいたりもするのかしら?」
 

つまり言いたいことは坂本が帰るかどうかで、未来が大きく変化するかどうかってことよ。

確かに坂本は1996年に帰るかもしれないけど、それで今の私達に変化が訪れるかどうか…、正直これから坂本が帰る1996年の私に嫉妬する残念アラサーがいるのよ。


分かる? 遠藤。


だって今の私は15年間、坂本に焦がれていたのに。
 

「随分辛い思いしたのに、それさえも忘れるような未来が訪れるのかしら? どう思う? 遠藤」

「お前が言いたいのは未来が分岐するんじゃないかってことか? SF的に考えて」


「そういうことになるのかしらね。
坂本がいる未来、そしていない未来に分かれる可能性もあるってことを、私は言いたいの。明らかに私達は後者よね」


そんなことになったらなによ、失恋じゃない。悲恋じゃない。折角両想いになったのに。


ブツクサブツクサ唸る秋本から八つ当たりの叩(はた)きを頂いてしまう。


怒ることも億劫だからそのままにしておくけど、坂本が帰って未来が変わるかどうか、か。

難しい問題だ。

俺は全知全能の神じゃないし、坂本が帰ったことで未来がどうなるか予測さえも不可だ。
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