15のチルドレン -Secret End-
「秋本先生。ボーっとしているようですけど、大丈夫ですか?」
富窪先生に声を掛けられた私は曖昧に笑みを返す。
すこぶる顔色が悪そうに見えたんだろう。
「風邪でも引いたんですか?」と気遣われてしまう。
風邪を引くなら、薬の一つでも飲んでおけばケロッと治るだろうけれど。
憂鬱を思い出して私は深い溜息をつく。
負のオーラを醸し出していたことを女子生徒に人気の高い高橋先生にもばれてしまったのか、「悩み事ですか?」と愛想の良い笑みを向けられた。
悩み事も悩み事よ。
あの馬鹿が消えてから毎日が退屈でたいくつで。
なんでもないんですよ、私は空笑いを貫き通して採点に専念することにした。
今日は数学の小テストをしたのよね。
皆のデキは…、ああ、両極端。
出来る子は満点だけど、出来ない子はとことんな点数。
教え方に問題があるのかしら?
唸る私は憂いを小テストの採点に八つ当たり。
大袈裟な丸やペケばかりつけてしまった。
ペンを持つ手にも力がこもってしまうし。
私の憂鬱を職場の先生は心配してくれたけれど、今はそっとしておいて欲しい心情だ。
この痛む気持ちを理解してくれるのは、きっとあいつの親友だった遠藤だけだから。
高橋先生に食事に誘われたけど、丁重に断って、私は勤務を終えると寄り道せずに真っ直ぐ家に帰った。