15のチルドレン -Secret End-
“お帰り、秋本。メシにしようぜ、メシ! 腹減っちまってさ!”
玄関扉を開けると必ず聞こえていた坂本の声。
今はその声もなく、点いている筈の電気も消灯されている。
お風呂も沸かしてくれていたけど、今は自分でしないといけない。
独り身の寂しさを痛感するわね。
晩酌に付き合えなくとも、愚痴に付き合ってくれていた居候人がいない。
ほんと寂しいわね。
また一つ溜息をついた私は、先にシャワーを済ませることにした。
その後はお楽しみの晩酌、これがないとやってられない。
チューハイの蓋を開けた私はテレビをBGMに、郵便受けに入っていた手紙に目を通す。
ダイレクトレターばかりね。
社債とか興味ないし、土地を買う予定もないし、見合い案内? 煩いわよ。私はもう見合い話にウンザリしてるんだから。
それから、「あ」私は茶封筒に入っている手紙の文字を見つめた。
「同窓会のお知らせだわ。これは…、中学の同窓会か」
日程は再来週の日曜日。
時間は12時、か。
私、中学の同窓会は一度も経験がないのよね。
行けば坂本を思い出すから避けていたけど、遠藤は行くのかしら?
ちょっとメールしてみよう。
私はスマートフォンを取り出し、遠藤にメールをする。
坂本がいなくなってからというものの、頻繁に遠藤と連絡をするようになったのよね。
遠藤も甲斐甲斐しく連絡をしてくれるし、お互いに失った友情・恋心を慰めあっているって感じかも。
恋愛に発展しないのは、私達に限りない友情が芽生えているからだと思う。
第一遠藤みたいなズボラ男を恋愛対象にしたいとは思わないわよ。
なにかと苦労しそうだし。
―――…坂本、ちゃんと帰れたかしら。