15のチルドレン -Secret End-
あれにしようかこれにしようか、うんぬんパスタに目を光らせていると遠藤が吐息をついて窓の外に目を向けた。
「坂本、どうしてっかな」
出すつもりのない独り言だったんだろうけど、遠藤は無意識に吐露。
息を吹き返して決まり悪く、「すまん」忘れてくれと苦笑いを零してきた。
私は間を置いて首を横に振る。
私が不安を抱いているように、親友を失った遠藤もまた不安を抱いていて当然。
気持ちは分かる、痛いほど。
「坂本がいなくなって」
家が静かよ、びっくりするくらいに、私はおどけ口調で言った。
「あいつは」
騒がしい奴だったもんな、遠藤は幾分トーンを高くして答える。
「戻れなかったら、俺、シングルファーザーになってやるつもりだったんだけどな。一人くらい養えないことねぇし」
「あら、パパになる気だったの?」
「お前こそ、どーせ坂本と同居するつもりだったんだろ? 先生と生徒の禁断愛。微笑ましいねぇ」
「う、う、煩いわよ! べつにあいつとは禁断でも何でもないじゃない! 同級生なんだから!」
ただその手違いで二倍の歳があるわけだけど。
唸り声を上げる私に肩を竦めて、「消えた未来は」結局継続されるんだな、遠藤は切なげに呟く。
15年間、あんなに待ったのに、結局ぬか喜びしかできないなんて。
再会できて良かった反面、親友が消えた悲しみ、そして変わらない未来に打ちひしがれるしかないと遠藤は語る。
相槌を打つ私は、お冷に手を伸ばして現実は残酷だと苦笑した。
「坂本、泣いてないといいけど。今度は1980年くらいに戻り過ぎてパニックになってそうでなってそうで」
「怖いこと言うなって。俺まで余計な心配するだろ」