15のチルドレン -Secret End-
「―――…ける。おい、健。聞こえてっか、健?」
ぼんやりしていたせいか、家庭教師になってくれている兄貴の呼び掛けに数秒遅れてしまう。
息を吹き返した俺は、「なに?」顔を上げて兄貴に視線を投げた。
もしかしてどっか間違ってるか、俺は自分の解いた数学の問題を見つめる。
多分あってると思うんだけど、如何せん俺は数学が苦手だからな。
兄貴と違って数学できねぇから、間違ってる箇所が…、ヘックシュン。ヘックシュン。ヘーックシュン。
ズズッ。鼻を啜っていると、「今日は仕舞いにしようぜ」兄貴が参考書を閉じて片付け始める。
「えー」でも目標ページまで終わってないのに、俺の訴えに、「体調管理」そっちが優先だと素っ気無く返す。
「顔が赤い。熱があるかもしれねぇぞ。
待ってろ、体温計持ってくるから。そこに俺の上着があるから羽織っとけ」
さっさと居間から出て行く兄貴は、体温計を取るため箪笥に立つ。
もう少し勉強して痛かったけど、しょーがない。
兄貴はもう教えてくれ無さそうだし。
弟の悲しいサガだよな。
兄貴に命令されたら逆らえないってのは。
俺は渋々筆箱にシャーペンや消しゴムを仕舞うと、消しカスを手で拾ってゴミ箱へ。
座椅子に掛けていた兄貴の上着を羽織って自分の顔を触る。
熱あんのかなぁ、手の平の体温が高いから分からん。
気のせいだと思いたいけど、クシャミが出てきているのは確かだし。
体調を崩したかな。
2011年旅行をした時でさえ、基本的に風邪は引かなかったのに。
「健」体温計を手渡され、俺は脇にそれを挟む。
暫くすると音が鳴ったから、体温を確認。する前に兄貴が横取りしてきた。
なんだよ、俺、まだ見てないのに。