15のチルドレン -Secret End-
小皿と箸を受け取り、年寄りくさい手つきで俺は夕飯を食べ始める。
「美味い」褒めると、「不味いって言ったらぶっ飛ばす」鼻を鳴らされた。
だから美味いって言ったじゃん。
本当に美味しいし…、鼻は通っているから味はするよ。
ちゅるっと麺を噛み締めて咀嚼していると、「なあ健」兄貴がちょっと遠慮がちに声を掛けてくる。
視線を流せば、「学校楽しいか?」兄貴らしくない質問が飛んできた。
俺はうんっと頷いて、保健室登校だけど上手くやっていると返事した。
早く教室に戻りたい、その気持ちを言えば、兄貴は間を置いて「ペース飛ばしすぎんなよ」と苦笑。
「なんかお前、根詰めて努力してるところが垣間見えるからさ。
少しは自分の好きなことをしたっていいと思うぞ。勉強ばっかじゃ、毎日がおもろくねぇだろ?」
「んー、そういっても…」
「それにだ。お前、急に人に頼らなくなりやがって。
さっきもそうだ。体調悪いなら悪いって言えばいいし、なんかして欲しいことがありゃ俺に言えば良かっただろ? 氷枕くれぇ作ってやれるぞ。
人に頼るってことは迷惑じゃねえんだ。頼むから心配させんな。一人でなんでもかんでも頑張ろうとすんじゃねえよ」
なんか涙腺にきたぞ、兄貴がドラマチックなことを言ったせいだよな。
「雨が降る」俺は若干涙声で兄貴に一笑。
「馬鹿」雪でも降りそうだぜ、兄貴は自分の発言にらしくなさを覚えているのか、大袈裟に肩を竦めてきた。笑っちまう俺がいる。
こうして兄貴と喋っていると、どっかでホッとする俺がいるんだ。
だって俺、もしかしたら消えるんじゃね? っていつもどっかで怖じを抱いていたから。
「明日は熱が下がっても休んだ方がいいぞ、健。最初から飛ばし過ぎなんだよ、焦るなって」
「やっと学校行けるようになったのに…、けどそうした方がいいのかな」
「倒れられても迷惑だし、周囲も心配すっぞ。俺だってなぁ…、あ? お袋が帰って来たみたいだな。あーあ、顔合わせるの気鬱だ」
愚痴る兄貴は腰を上げると、「んだよ」そんなでっかい声で呼ぶんじゃねえよ、と自室から階段に向かって声音を張った。