15のチルドレン -Secret End-


鼻を鳴らす某教師は、「べつに」今はヤラシイことされてないし、それにそういう余裕も無さそうだし、と複雑な顔を見せた。


「やっぱりアラサーは魅力皆無かしら」


とかぼやきも少々。

なんだよ、バッチシ女を意識してるじゃんか。秋本センセイ?


冗談も程ほどに、秋本は俺の提案に少し思案。

そして「数日間預かってもらえたら嬉しいかも」と話を切り出してきた。
 

「あの子が邪魔とか、そういうのじゃないの」


いらない前置きだな。

知ってるって、話を聞いてりゃ大よそ見当もつく。


「ただ坂本には、もう少し居場所を広げてあげようと思って。

いつも不安なのよ、あの子。
外にも出られず、家にも帰れず、学校にも通えない。

頼れるのは私ひとり、それだけじゃ坂本の不安は払拭できないわ。

遠藤、あんたにも手伝って欲しいの。
居場所を作り。1996年にいた頃も、居場所のことで思い悩んでいたみたいだから」


「あいつの両親…、離婚危機だったしな」


俺との喧嘩も気に掛けているに違いない。

いや、俺が気に掛けているんだ。

俺は辛辣な言葉を放った浅かな己を今でも罵っている。


消えろ、軽はずみなことを言ったばかりに坂本は本当に消えちまって。


どんな原因があるにしろ、あんなことは言っちゃなんねぇんだ。本当になっから。


俺はカップの中身を飲み干して、ソーサーに置くと「任せとけ」目尻を下げた。


「落ち着いたら坂本を家に呼ぶよ。15であろうとなんだろうと、あいつは俺の大事な親友だ」
 
「遠藤…、ありがとう。早速家に来ない? 坂本と少しでも話しましょう。あの子、内心じゃアラサーのあんたと話したがってるわよ、きっと。あんたもでしょ?」
 

「当たり前だろ?」


15年分の話が山のように積もっているのだと、秋本に吐露。

その時の俺の顔はほんの少しだけ歪んでいただろうけど、秋本はそっとしておいてくれる。


心遣いがスッゲェありがたかった。
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