『蒼色の瞳の猫』
…あれは、絶対に忘れられない日。
あたしが家を出て行った日の事。

『あー、今日ご飯食べてきちゃった。
自分で作って?』

『ちょっと、掃除と皿洗いは!?
帰ってくるまでにやってって言ったわよね?』

まるで、鬼のような怖い目で睨んでくるお母さん。
…こんなことは、小さいころからだったからもう慣れたけど。

でも、あたしだって、いくら慣れたとはいえ辛かった。
けど、お母さんが、可哀想だって思えたから、耐えてたんだ。

だけど、日に日に口が悪くなるお母さんに、
あたしは、キレた。

『…っ、そんなに言うならあたしもう…
この家、出てくから!』

あたしがこんな事を言うのはめずらしかった。
だから、きっと引きとめてくれるって…

心のどこかで思ってたのに。

なのに。

『そう?助かるわ。お母さんね、
また結婚しようって思ってたの。
だから、海美には一人暮らししてもらおう、
って思ってたのよ~!』


今までにない嬉しそうな口調で、
お母さんはあっけなく、そう言ったのだ。






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