ここから始まる4つの恋
「どうしたんだ?調子でも悪いのか」

「・・・そういう訳じゃないけど」

歯切れが悪いなどうしたんだこいつ?

「ねぇ。橘くん、いや!陸斗!」

はい?俺の耳がおかしくないのなら陸斗と聞こえたんだが。

「もっかい言って」

「だから、陸斗!」

どうやら間違いじゃなかったようだ。

「なぜ呼び捨て?しかも下の」

「べ、別にいいでしょ!?だから陸斗も私のことしたの名前で呼んで!」

「・・・別にいいけど」

「じゃあほら!」

「お、おう。楓」

「それでよし!ふふふ~」

奇妙な笑い方だ。

「ほら早く行こうよ~陸斗!」

やっぱりこいつは変な奴なのかもしれない。だけど、下の名前で呼ばれるのは不思議と嫌悪感はなかった。その笑顔だってとても輝いて見える。

「そうだな」

俺は返事をして、歩き出す。いつもは一人で歩いて帰る道を、ひょんなことで知り合った女と二人で。
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