K.O.O.L−kiss Only One Love
「4組に超カッコイイ先生来たらしいよ!!」
あたしのクラスでも噂になっていた。
「聞いた?夕葵!4組の外部講師の話♪見てみたぁぁい!!」
「…あんまり興味ないな…あたし。」
「いいじゃん♪見に行こうよ!!」
サチは無邪気に言う。
「あ!!あの人じゃない?!すごい!女子に囲まれてるわぁ…。
ね、夕葵、見に行こ!」
あたしはサチに無理矢理腕を組まれて、その女の子達の塊に連れていかれた。
ほのかに鼻をかすめるシトラスの香りが、あたしを惑わした。
あたしは、その人の名前を口に出した??
…出してない。
それなのにその人はあたしの方に振り返った。
あたしは、その人から目が離せなかった。
その人もあたしを…あたしだけを見た。
一歩、一歩…とあたしに近付く。
あたしは、目をギュッととじた。
あたしの横をシトラスの香りが通り過ぎる。
今度はあたしが名前を呼ばれたかのように、振り向いた。
あの時と同じだ…
辛そうな顔をして、あたしを見ている。
そんな顔であたしを見ないで…
「やま…と…」
あたしは誰にも聞こえないように呼んだ。
大和は、そんなあたしを見て、
「ゆうき…」
声に出さずにあたしを名前をよんだ。