白花に恋する(企短)
顔を上げた私の視界に、頼りない光に照らされた篤沙がぐにゃぐにゃになって立っていました。
ぐにゃぐにゃなのは、私が泣いていたせいです。
涙の向こうの彼は、呆れたように笑っていました。
「俺みたいなやつに、声掛けられたら危ないでしょ」
変わらず、彼は私の隣に座ってくれました。
「何時間泣いてんの」
「……あつさ、私」
「うん」
よしよし。
私が泣くと彼は決まって頭を優しく撫でながら話を聞いてくれます。
……そう言えば、薺の名前がついた一説には“撫でたくなるほど可愛い”から“なでな”となり“なずな”になったとも。
これは余談ですね。