白花に恋する(企短)
「この辺、いっぱい咲いてるんだな。ぜんぜん知らなかった」
すごく嬉しそうに言うから、私もつられて笑います。
「ね、知らなかった」
なずなも、彼の腕の中で花が咲いたように笑うから幸せな気持ちになりました。
あれからまた4度の年が過ぎ、今でも春になると彼はどこからか薺を摘んで帰ってきます。
食卓の真ん中にちょこんと佇(たたず)むそれが愛おしくて、私は毎年、その花を撫でるのです。
“全てを捧げます”
花言葉の通り、私は彼に、これからもすべてを捧げてずっと一緒にいたいです。
ついつい、思い出してしまうのです。あの日の私達の約束は、今でも大切に守られています。
end.