「卒業式と恋。」
しょうがないなぁ、なんて思っていると、雪の前にも同じものが差し出された。

雪:「ぼ、ボクは運転するから!」

秋:「あら。徒歩(とほ)で来たじゃない。」

雪:「うぅ~。」

秋:「ふふ。」

秋:「もしかして、酔っ払いが嫌いなのかな?」

雪:「あっ。そのっ。・・・まぁ、そうだよ。」

秋:「あら。あたしも嫌われちゃうわね。」

雪:「秋は・・・。もう。いじわる・・・。」

秋:「ふふふ。」

結局、雪も缶ビールを飲んでしまった。

どうにでもなってしまえ。そういう考えが生まれたのだ。

気分が良くなってきたころに、腕時計が日付が変わったのを知らせた。

宴会で食べてきたので晩御飯(ごはん)はいらない、とメールを打っている最中に、秋がふらふらと立ち上がってどこかへ行こうとした。ついていく雪。

雪:「どこいくの?」

秋:「あら。トイレよ。」

雪:「ボクも。」

秋:「ふふ。そう。」

雪:「あき・・・?」

秋:「なぁに?」

雪:「お酒臭(くさ)い。」

秋:「それは、そうよね。ごめんなさい。」

雪:「もう・・・。キミはばかだなぁ・・・。」

秋:「ふふ。」

秋が個室のトイレに入ってしまう。壁越(かべご)しに会話は続く。

雪:「ねぇ・・・。秋?」

秋:「なぁに?」

雪:「今日、楽しかったよ。」

秋:「あたしも、楽しかったわよ。」

雪:「えへへ。」

秋:「どうしたの?」

雪:「ううん。秋は、こういうこと、初めて?」

秋:「そう。そうよ。」

雪:「ふぅん・・・。」

秋が個室から出てきた。

顔が紅潮(こうちょう)している。目がとろんと溶けてしまっている。


雪は、ため息を吐くと宴会場まで戻って帰ることを告げた。そして、すっかり酔ってしまった秋をつれて帰ることにした。

殆(ほとん)ど意識のない秋。

きちんと明日学校に来る事ができるのか。それよりも、今日は帰れるのだろうか。それが心配だった。





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