「卒業式と恋。」
雪:「それじゃ、明日ね?」
秋:「・・・えぇ・・・。」
雪:「もう。ばかだなぁ・・・。」
秋:「ごめんなさい・・・。」
雪:「気をつけてよね?」
秋:「ごめんな、さい・・・。んにもできな・・・。ごめんなさ・・・。」
雪:「ふぇ?」
秋:「・・・それじゃ・・・。」
雪:「えっと、うん・・・。また明日ね。」
秋:「また明日・・・。」
また明日、という言葉を聞いた秋の顔が笑顔に見えたのは、気のせいだったのかもしれない。
そして、春が過ぎた。
夏がやってきそうだった。暑い夏。
雪は海に行きたくなった。秋にその事を話すと、秋も同意してくれた。
お酒は、飲まない。その約束で行く事にした。
夏休み、友達のいる夏休みが、久しぶりのように感じられた。
雪:「よぉし。それじゃ、頑張(がんば)ろう。」
秋:「何を?」
雪:「えへへ。いろいろだよ。ヒトナツノコイだよ。」
秋:「ばか。ふふ。」
雪:「えへへ~!」
砂浜にやってきた。日焼けはしたくなかったが、諦(あきら)めてしまっていた。冷たい海の中ではしゃいでいる。しょっぱい海水が妙にさわさわとはしゃいでいた。
近くの海だったが、何度も見てはいた海だったが、通学路の海だったが、それでも新鮮な味がした。
二人は、赤から黄色に変わっていく夕日を眺めて、手を握った。
雪:「今日も、終わっちゃったね。」
秋:「そうね・・・。」
雪:「今日も、楽しかったよ・・・。」
秋:「あたしも・・・。」
雪:「うん・・・。」
雪は、秋の顔を見ていた。
相変わらず悲しそうな顔をしている。本人には自覚はないそうだ。
しかし、寂(さび)しげに見えるのだ。
そこで、秋の日に焼けてしまった頬(ほお)にキスをした。
秋:「なに、してるの?」
雪:「えへへ~!」
秋:「もう。ばか。」
雪:「えへへぇ・・・。」
寂しい顔を吹き飛ばす事ができたなら。それだったら良かったのに。
秋は、苦(にが)笑いと明るい雰囲気を装(よそお)っているように見えた。
そんなことをして、合間に勉強をしていると、すぐに夏は終わってしまった。