俺と生徒。
"瀬戸先生"か。
中川に先生って呼ばれたのは初めてだな。
「先生、大丈夫…?」
南が心配そうに俺の顔をのぞく。
「大丈夫、さんきゅな!」
南に口止めをしなかったのは、南なら喋らないと思ったから。
それほど良い子だと知っているから。
「先生ってやっぱモテるんだね…大変だね…」
「モテないよ、全然。」
「健太もね、モテるんだ。あたし今日は先生に相談聞いてもらおうと思ってきたけど…無理…だよね」
不安そうに聞いてくる南。
「大丈夫、聞くよ。」
「本当!?あのね、あたし一回健太にフラれてるんだあ…でも健太、変わらずに話し掛けてくるの…それ、あたし苦しいんだよ…」
「うん」
「だからもう一回告白して、終わらせようかと思う…どうかな…」
「うん、いいと思う」
南もいろいろあったんだな、と思った。
いつも元気な南がここまで泣きそうになってるところは見たことない。
俺は自然と中川を思い出した。