罪血 -番外編-
もう終わりなのか…

そう思った瞬間。

「貴様アァァァア!!!!灑梛に何しとんじゃぁぁああぁ!!」

バァァンと勢い良くドアが開いた。

「な…どうやって!?」

有沢はガバリと振り向き、その人物を見つめた。

「どうやってなんか、どーでも良いだろ」

ガッと胸ぐらを掴む。

「失せろ」

そう低く短く吐き、そのまま殴り飛ばす。

「痛ッ!!」

ガコンと音を立てて机にぶつかる。

「大丈夫か、灑梛」

その人物は、灑梛に近づき、口に詰めてあったタオルを抜き取った。

『み…ずき…』

そう――――――――…
灑梛を助けた人物は、久遠 瑞希だった。


灑梛はひどく掠れた自分の声に驚きながら、瑞希を見つめた。

「おい…俺も一応、男だかんな」

そう言って俯き、また顔を上げた。

「手…痛そうだな」

呟きながら、ネクタイをほどく。灑梛の手首には赤痣ができていた。

「おらよ」
『キャッ』

瑞希は灑梛に制服を投げつける。

「それ着て、廊下で待ってろ」

その言葉に灑梛がコクン、と頷くと、顎で廊下を指し示した。

「行け」

命じられ、灑梛は急いで制服に着替える。そして、生徒会室を飛び出した。

「さぁ…」

灑梛を見送った瑞希は、有沢を見た。

「ふざけてんじゃねぇぞ?テメェ、灑梛に何するつもりだった?」

表面上は、優しく。しかし、言葉とは裏腹に表情は冷徹だった。

「世の中自分の思い通りになるとは限んねぇんだよ!!」

怒り最高潮で怒鳴る瑞希に、有沢は悪びれた様子も無く言った。

「彼女が悪いんだよ?俺の告白断わったから」

この言葉が、さらに瑞希の怒りに拍車をかけた。

「死ね!!」

有沢の頬を瑞希が殴る。
かなりの力(実力の1/3未満)で殴ったため、有沢の意識が飛んだ。

「あ?…んだよ、もう終わりかよ。もうちょっとボコりたかったのによ!」

有沢から離れ、廊下に出る。そして、俯いている灑梛に屈んで目線を合わせた。












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