罪血 -番外編-
「大丈夫か?」
『…うん』
「ごめんな」
『何が?』
「もっと…早く来てあげられなくて」
その言葉に、灑梛は僅かに首を振った。
『いい。気にしてない』
「…そうか」
『瑞希、』
灑梛は顔を上げ、意を決したように口を開いた。
『助けてくれて、ありがとう』
「…、あぁ」
瑞希は小さく目を見張った。
灑梛の頬には、涙が伝っていた。何にも屈しない、強靭な心を持った、あの灑梛が。
瑞希は動揺を悟られないように後ろを向いた。
『瑞希?』
「バカ野郎」
そう言って、ハンカチを差し出した。
「帰るぞ」
歩き出した瑞希に、灑梛はハンカチを受け取り、小さく
『ありがとう』
と、また呟いた。