時を越えて ~約束~





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『瑠璃!瑠璃!行かないでくれ!僕は、まだ君に伝えていないことがたくさんあるのだから!』


不思議と違和感はなかった。私はいま瑠璃になっている。
私の目の前で涙を零しているのは最愛の人、琥珀。


『分かっているつもりよ。あなたが私に何を伝えていないのか。・・・それでもよかったのよ。あなたの傍に居れたのだから。心配しないで。私は平気よ。痛みも何もないから。ただあなただけが心配だわ。』

私はきっとこのまま死ぬんだろう。確信しているけれど恐怖も痛みも何も感じない。ただ感じるのは、琥珀への想いだけ。

『僕の心配なんてしないでくれ!それより…気付いていたのか?』

この人の動揺がはっきりと目に映る。

『ええ。あなたをいつも見てきたから。だけど、あなたは何も悪くないの。』


口から言葉はスラスラ出てくるけど、何のことを言っているのか分からない。瑠璃の記憶を全部知ってるわけじゃないから。

分かるのはこの愛しいのに切なくて少しだけ憎いような気持ちだけ。

何が原因でこんな気持ちに瑠璃はなったのだろう。


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