刻の無い少女
「大丈夫か?」
顔を上げると虚が、心配そうな顔をしていた。
「虚?」
確かめるように言うと、虚の表情が和らいだ。
その表情を見るとこっちまでどこか暖かくなる。
「立てるか?」
うなずいて答えると手を差し伸べてくれた。
その手に自分の手を重ねて立つ。
「庭に行こう。」
「庭?」
庭とはいったい何なんだろう。
鵯の疑問に気付いた虚は一瞬暗い顔つきになった。
「庭というのは美しい植物たちが植えてある場所のことだ。行けばわかる。」
またうなずくと虚に手を引かれ庭へ向かった。