刻の無い少女
サクラはきれいだ。
「あの桜が気に入ったのか。」
はっと我にかえってうなずいた。
少しだけ虚が笑っていた気がした。
虚が桜の方へ行くから連動的に私も向かう。
近くになるほど垂れ桜は神々しくて大きかった。
いったいどれほど生きたらこんなに大きくなるんだろう。
歩調が急に速くなって虚の手を離して前を行く。
どうしようもない焦燥感に駆り立てられる。
早く桜の近くまで…
あの桜がおいしそうに見えた。
着いた桜の根元で香りを堪能するように肺いっぱいに空気を吸う。
近くにあった垂れている桜を一束とり
桜に
かじりついた
ほのかに甘く少しの酸味もある。
桜の味――
「桜と言うのは美味いのか」
その問いには答えず一心不乱に桜を口に運んだ。