刻の無い少女
手早く包丁を動かしていると、ドッンと廊下の方で音がした。
追手か?
それにしては随分間抜けな音がしたな。
前掛けを外し廊下へ向かった。
手をのばしてうつ伏せに倒れている
白い小袖を着ている
同じ黒髪の
――――――鵯…。
おそらく裾をふんずけて倒れたのだろう。
「大丈夫か?」
声をかけると顔を上げた。
鼻と額が少し赤くなっている。
「虚?」
確かめるように名を呼ぶ。
「立てるか?」
そう尋ねるとうなずいた。
手を差し伸べて、お互いの手を重ねて立つ。