刻の無い少女





手早く包丁を動かしていると、ドッンと廊下の方で音がした。






追手か?


それにしては随分間抜けな音がしたな。




前掛けを外し廊下へ向かった。







手をのばしてうつ伏せに倒れている



白い小袖を着ている


同じ黒髪の



――――――鵯…。






おそらく裾をふんずけて倒れたのだろう。




「大丈夫か?」




声をかけると顔を上げた。


鼻と額が少し赤くなっている。






「虚?」




確かめるように名を呼ぶ。




「立てるか?」



そう尋ねるとうなずいた。





手を差し伸べて、お互いの手を重ねて立つ。







< 40 / 143 >

この作品をシェア

pagetop