刻の無い少女




「庭というのは美しい植物たちが植えてある場所のことだ。行けばわかる。」




手早く説明してみたが、鵯はよく分からないという顔をしていた。







手を引いて長い廊下を歩く。





ちゃんと付いてくる

ちゃんとここにいる

ちゃんと握った手からはぬくもりを感じる。





しかし、握り返すことはない―…。



握り返してはくれない。





先刻からずっと下を向いたままだ。




早く庭を見せてやろう。そうすれば少しは元気になるはずだ。





病み上がりな鵯を連れ出しているじてんで鵯の元気を奪っているも同然なのだが…。





そのあたりの概念がない虚だった。







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