刻の無い少女


虚は目を見張っていた。



「そうか。それは…よかった。」


口元を隠しながらそう言うと、盆を持って部屋を出ていった。



待ってという言葉が喉まで出かかったが、ピシャッと閉まった襖の音を聞いて諦めた。




一人になると、逃れられない悪循環に陥ってしまう。



頭を抱えて布団の中へ潜り込む。


眠らずに目だけ閉じておく。



また悪夢を見るのは嫌だから。







しばらくずっとそうしていた。







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