写真を撮って
「………君はなんでそんなに暇なの」
「えー、暇なんかじゃないもん」
「だって、毎日ここに来てる」
「おにーさんだってそうでしょう?」
「僕はこれが仕事だ」
「………本当におにーさん、カメラマンなの?」
「………失礼な」
おにーさんは立ち上がって、また歩き始めた。
あ………。
怒らせちゃったみたい。
「ごめんなさい、おにーさん」
その広い背中に飛び付きながら謝ると。
「……違う、怒ったんじゃない。……………あれ、見て」
おにーさんが指差す方を見ると、真っ直ぐな飛行機雲。
「……好きなんだよ、あれ」
そう言ってカメラを構えた。
…………あー、まただ。
私はおにーさんのこういう可愛らしいところを見ると、心臓がもってかれるような感覚に陥る。
そしてどうしようもなく暖かくてふわふわとした気持ちになるのだ。
………どうかこの気持ちはおにーさんにばれていないと思いたい。
だって私は、おにーさんの名前すら知らない赤の他人なのだから。