あやめ【短編】
肩を掴まれた瞬間私は倒れ込んだ。



「おい!」


「いゃあああ!!助けてー!!」


「おい!!」






…………へ!?



目を開けると、“優作”が立っていた。



え!?優作さん!?


優作はしゃがみ込むと、私の顔を除きこんだ。




「これ…あんたの?」


手に抱えられていたのはいなくなったはずのベル。



「ベル!!」


私はベルを受け取るとぎゅっと抱き締めた。


「急に襲ってくるから驚いたよ。狙いはこれだったけど。」


優作が持っていた袋の中にはたい焼きが入っていた。



「これ嗅ぎつけてきたんじゃない?」



「あ……すみませ……」



私はぽかんと口を開けたまま、優作を見つめた。



「…立てる?」


優作が手を差し延べる。


「あ…あれ!?」


立とうとしても足に力が入らなかった。
まだガクガクと震えている。


優作はそんな私を見ると一度溜め息をついた。



「ほら。」


背中を向ける優作にまた顔をぽかんとする。
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