あやめ【短編】
「ほら!」


少し苛ついたように、背中を近付けた。



もしかして…おんぶ…!?


「いいです…!そんな…」


私は首を横に振った。

優作は黙ると、私の腕を無理矢理引っ張る。
私はそのまま担がれた。


「あの…本当にいいですっ!重いしっ。」


「重くないよ。」



優作はトンネルの出口へと向かった。



「あの………優作さん何であそこにいたんですか?」


私は慣れないおんぶに緊張しながら聞いた。


「…仕事場が近くだったんだよ。」


「…そうなんですか。」






しばらくの沈黙に私は戸惑った。





…あ。


「コチョウラン?」


私は思わず口にする。

「え?」


「あっ…いえ。」



ヤバイヤバイ。


何言ってんの…


でも…優作さんからコチョウランの香りがした。







「座る?」


いつの間にか家の近くの公園に来ていたことに気付いた。


私をベンチに降ろすと、温かいたい焼きを手渡す。


「驚かせちゃったお礼。」


「あ…ありがとうございます。」
< 12 / 66 >

この作品をシェア

pagetop