あやめ【短編】
手袋をつけていない私の手は赤く霜焼けになっている。


…なんか…緊張するな…


「足大丈夫?」


「え?」


「転んだとこの…」



「あっ…ハイ。大丈夫です。」


私は俯いていた顔を優作に向ける。



…!!


優作も私の顔をじっと見ていた。





その時だけ何か時が止まったようで……



「君は…どこかで会った?」








「…は?」


優作が不思議そうに私の顔をまじまじと見る。


「どこかで会ったような気がして……」


「…え?私は昨日初めて会いましたよ。」


私は生温いたい焼きのあんこが零れているのも気付かず、優作の顔が何回も記憶の中でグルグルと回らせていた。



「あ…でも……」


私はまた顔を伏せる。

「何?」


「…私、小さい時の記憶があやふやだから…」


優作は一度私の顔を伺うと、どうして?と聞き返した。


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