あやめ【短編】
学校に着くと、結衣ちゃんが駆け寄ってきた。


「あ。おはよう、結衣ちゃん。」


挨拶をするが、結衣ちゃんは私の顔を伺うと急にニヤけた。


「見ました。見ましたよ。彩芽さん。」


「はぁ?」


私は何を言っているのかサッパリで顔をしかめる。


結衣ちゃんは周りを見てからまた私に視線を移した。


「昨日、男の人と一緒にいたでしょ。」



え……


「な、なんで知ってるの!?」


大きな声を出すと、結衣ちゃんは得意そうな顔をして微笑んだ。


「昨日偶然通りかかったら見ちゃったの。ビックリしたよー。あんなカッコいい人、やるね~彩芽も!」


「ちち違うって!あの人はたまたま会った人で…」


「たまたま?」


結衣ちゃんは首を傾げる。


「たまたまっていうか…会ったのは2回目なんだけど…」


「なぁんだ。そうなんだ?彩芽の彼氏にしては大人すぎると思ったんだよねー。」



そ…そうかな?


私は教科書を取り出すためリュックを開けると、ヒラヒラとさっきの名刺が落ちた。


…あ。そういえば…


「結衣ちゃん。ホテルのリアプトンってどこだか知ってる?」


「リアプトン?」


結衣ちゃんは考え込むと、思い出したように顔を上げた。


「それって超高級ホテルじゃない?有名だよ。」


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