あやめ【短編】
夜。



コンコン と扉がノックされる。


宿題をしていた私は、顔を上げ振り向いた。


「彩芽ちゃん。ちょっといいかな?」



「唯斗さん。いいよ。」



唯斗さんは少し控え目に顔を除かせると、中へと入ってきた。



「宿題してたんだね?ごめん…」


「えっ…ううん!全然集中してなかったから…どうしたの?」



唯斗さんは座ると、私の顔をじっと見た。




「彩芽ちゃんさ……今日大通りのホテルに行ったよね?」






………え……!?


なんで知ってるの?



私はいきなりで言葉につまる。



「彩芽ちゃんと別れた後、様子が変だったから…心配で追いかけたんだ。そしたらホテルに。」



「…あ…………。」



「どうしてホテルに行ったの?……友達と約束してるって嘘だよね?」




どうしよう。




唯斗さんに…嘘なんてつけられない…




黙り込む私を見て、唯斗さんは私の手を掴んだ。



「もしかして…あの男の人?」




ドキン。


「あ…う…」


「そう…なの?」






私はコクンと頷いた。





「…来いって言われたの?」


「違っ……私が…行ったの…。でも優作さん熱で倒れてて…っ!?」



唯斗さんは急に私を抱き寄せる。





ゆ…唯斗さん……!?




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