あやめ【短編】
たぶん仲の良い友達よりも遊んでた。


優お兄ちゃんと一緒にいるとあったかくて…

いつしか、本当に大切になっていた。



夏休みも終わりに近付いたころ…


「ねぇ優お兄ちゃん。夏休みが終わってもあやめと遊んでくれる?」


広い川原の芝生に横になりながら、私は問い掛ける。


優お兄ちゃんは身体を起こすと静かに呟いた。


「…僕…たぶんもう遊べないと思う。」


「え!?なんで…」


「叔母さんの家が近くにあって…夏休みの間はここにいるけど…来週帰るんだ。」


「やだ!!帰っちゃやだよ!あやめ優お兄ちゃんの事好きなのに!」



「……え?」


私は口を手で抑える。


優お兄ちゃんは微笑むと私を抱き締めた。


「僕もあやめのこと好きだよ。女の子として…」


「本当?」


「うん。…あやめは約束できる?僕がここに帰ってくるまで僕のことを想っていてくれるって…」


「うん!約束する。絶対会いにきてね。絶対だよ?」



涙を溜めて頷くと、優お兄ちゃんは私のオデコにキスをした。



「あやめ…ずっと一緒にいてね。」


「うん。」





また会いにきて…


大好きだから…


「優お兄ちゃん…大好き。」






短い夏の…


初恋だった。
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