あやめ【短編】
それから…5日たった。


優作と会うことも、連絡をくれることもなかった。


一度リアプトンホテルに行ったが、もう優作はあの部屋から出て行ってしまっていた。







私は…普通の生活に戻った。





「彩芽。お昼食べよ!」


屋上で日なたに当たっていると結衣ちゃんがお弁当を持って走ってきた。


隣に座ると、良い天気だね。と一言口にする。



「ちょっと肌寒いね。」


「うん。でも温暖化のお陰で冬なのに雪降ってないよ。」


「まだ言ってるの?それ。」



私が笑うと結衣ちゃんはほっとした表情になった。



「よかった。彩芽やっと笑ったね。」



「…え…?」


「ここんとこ、ずぅっと悲しそうな顔してたからさ。」



結衣ちゃんはそう言うと微笑んで私の頬をつついた。



「彩芽も恋したの?」








…優作……



思い出すのはいつも優しいものばかり…


やっと好きだって気付いたのに……



「………逢いたい…」


14歳。



まだ小さくて人生の半分も生きていない中で、私は初めてこんなに誰かを想った。






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