あやめ【短編】
もしも寂しくて、泣きたい時はいつでも側にいるよ。



…この気持ちは嘘じゃない。




「すみませーんっ!!誰かいませんかぁ!?」


深夜、私はある建物を見つけた。


門には『東山自由孤児施設』とあった。


たぶん優作が住んでいた場所なのだろう…





何度か叫ぶと、部屋の電気がついて中から人が出てきた。



「なんでしょうか?もう子供達寝てるんですけれど…」


出てきたのは優しそうなおばさん。


私は安心して息をはいた。


「あ…すみません…っ!あの…私、見英彩芽っていいますっ。えっと…神木優作さんについて聞きたいことがあるんです。」


「…優作くんにっ?」


おばさんは驚くと、私を中へと入れさせてくれた。


小さい広場にはオレンジ色の可愛らしい椅子とテーブルが並んでおり、壁には子供達の絵が飾られていた。



「寒かったでしょう?はい。ココアよ。」



「あ…ありがとうございますっ!」








「それで…こんな真夜中に一体どうしたの?」


おばさんは私の寒さで赤くなった顔を心配そうに見つめた。




「私、東京から来たんですけど…道がわからなくて…」


「東京から来たの!?一人で!?」



「はい。……優作さんってここに住んでましたよね?」


「ええ。ここで暮らしていたわ。両親のことは…?」


「聞いています。」


「そう…大変だったものね。」


おばさんは顔を伏せる。
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