君と。
実奈子ver.
春田実奈子。
今日から中学生。
入学式は学校とは違うところで行われる。
勉強とか、部活とか、先輩とか、わからないこといっぱいだけど、今一番心配なのは“友達”。
小学生まではなんとなく声をかけてくれる子がいて、1人になることはなかった。
けれど中学は違う。自分から声をかけないと1人になる。
ひとりぼっちは絶対に嫌だ。
とにかく声をかけるために、色々な物を用意した。
近くの子に渡すプロフィールカード。流行りのマスコットキャラクター。サイン帳。可愛くて、あげても重くない文具。
「1ーA、そこに出席番号順に並べ〜」
担任の先生は思った通り中年のおじさん。
今だ!
「ねぇ、名前なんて言うの?あたしは実奈子」
思いきって後ろに並んでる子に声をかける。
本当に選ばずに声をかけたから、顔もよく見てない。
でも、見た瞬間ビックリした。
なんだか、すごく
……すごく、
可愛い。
髪質が柔らかくて茶色に近い、ねこっ毛のセミロングにクリクリの大きい目。
鼻はスッと高く、唇は鮮やかなピンク。
オマケにスタイルまでいい。
絶対モテるタイプ。それも気取ってないから女子にもそれなりに好かれそう。
どうしよう私、どんな相手に声かけてんの?
自分の【思いたったらすぐ行動】をこれほど後悔したことは無い。
でもその子はニコッと笑って
「ウチ利榎だよ。七瀬利榎。君のことは実奈子でいい?」
と言った。