1LDKヤクザ彼氏と秘密の同居生活【完】



「じゃあ、おさらいだよ。従兄の水森聡一お兄ちゃん。両親は県外に出稼ぎに行ってる。5月から聡一お兄ちゃんの家から学校に通わせてもらってる。オッケー?」


「任せろ」



昨日はなおさんから借りた眠くなる活字の本を読んできたんだ。そして、気づいた。


姉貴の旦那、皆吉さんをパクればいいんだ。立ち振舞い、話し方が本の通りだった。身近にいい手本がいてラッキーだったな。



校舎の三階にあがる俺達。廊下ですれ違う学生にジロジロと見られてカチンときた。



何ガン飛ばしてんだよ?



「……聡ちゃん、目付きが怖いよ。あと歩き方、がに股やめて普通に歩いて」



そ、そうだった。女のラミカに歩幅を合わせて、ゆっくりと優雅に歩く。話しかけられたら優しく微笑んで、耳を傾ける。



ああ、きもいきもい。こんなの自分じゃねぇ。



「あの人、かっこいいー。誰?」


「ラミカの親戚らしいよ。あとで声かけてみる?」


「ええー無理だよぉ」



女の集団の会話がコソコソと聞こえてくる。かっこいい?こんなのがかっこいい?



分からねぇ。俺には理解不能だ。




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