1LDKヤクザ彼氏と秘密の同居生活【完】



「水森正敏です」



迷うことなく言う俺に対して、ラミカと担任は驚いた表情をしていた。


毎日、長いことラミカんちに通ってたんだ。父親である債務者の名前くらい記憶している。



「……ラミカを大切に想っていることは充分伝わりました。姿格好を変えて、ラミカの従兄になりきってここまで来たのですから。私の気のせいだったことにしましょう」


「は?」


「ブラアンの元ヘッドが何故、名前を変えてここにいるのか不思議に思いましてカマをかけていました」


「! なんで……」



ブラックアンジュの通称、ブラアン。どうしてこいつが俺のいた族の名前と顔を知ってるんだよ?



「ここからは独り言です。自分も昔、ヤンチャしてましてね。引退したとはいえ、耳に入ってくるんですよ。あなたは色々と有名ですから」



思った通り、こいつも元ヤン。てか、最初から気づかれてたのかよ。とんだ茶番劇だな。なんか脱力……



「何故、あなたがラミカと暮らしているのか聞きたいことは多々ありますが、今は聞かないことにします」



プリントを机の脇に置いて、はぁとため息をこぼすと眼鏡の奥の瞳がギラギラと俺を見据えてきた。





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