偽りのお嬢様
「ま……間に合った…。」
主婦の戦場、スーパートヨトミ。
あの長たらしい制服というよりワンピースに近い服は脱ぎ、品の欠片もない、中学時代のジャージに着替えた。
(あの制服じゃバレバレよね。)
五十嵐学校は最もインターナショナルで、有名な学校。
そんなところの制服を着ていたらある意味道を開けてくれる。
タイムセールでは最前列に躍り出れるような力があるが、そんなことをすれば退学だ。
「…よし。」
小さく呟き、気合いを入れた。
――…カランッカランッ!
鐘がなった。一斉に静まり返る。
『タイムセール、スタート致します!!』
その声と共に、主婦は一斉に駆け出す。
ダダダダダ....!!!!
というすごい足音は、あるフロアに向かっていく。
私もピッチを上げ、目の前の主婦を押し退ける。
引っ越してきたばかりの主婦に、ベテランの主婦。
―…そんな経験値は私には関係ない。
「ぅ……うおおおおおぉぉぉっ!!」
ターゲットが視界に入る。このままっ………!!
ここは戦場。
あちらこちらから悲鳴が聞こえる。
そいつらはなれていない若造たちだ。
このスーパートヨトミはけが人続出のタイムセール。
でも、負けられない。
五十嵐学校の学生としてではなく、
主婦としてっ………!!
「………たぁっ!!!!」
ジャンプ一番、ターゲットに飛びかかった。
「よっ…しゃーーーぁぁ!!!!」
私は勝った。
隣ではタイムセールの終了を、私の勝利を明確にする鐘が鳴り響いていた。
.