【完】無知な彼女の周り


―誠Side――

土産物屋に入ってさ、迷っちゃ可哀想だからって思って、手つなごうとしたら

「何気取ってんの?」

って言うか普通?
オレの好意を無駄にしてんじゃないよ
しかもそのままどっかいっちゃうし、意味分かんねぇ
彼氏役してくれっていうから、してやってんのに、何してもブーブー言われてさ、なんて可愛そうなんだオレ

だいたい、会った時からそうだった。芝居うって、適当に女の相手してたとき、あいつが一喝いれたんだ。
バカにされてるのは
オレだって

今まで単純な女。って思ってたのは全部オレをバカにしてただけっていう…

そんな事ないって思ったけど、いざ全員フってみたら分かった。みんな2つ返事で別れた。誰も未練も好意も何も感じさせてくれない。付き合いたいっていうから付き合ったのに、なんだよこの裏切られた感は

誰もオレを想ってなかった。
オレが誰も想わなかったように。

あいつは変なヤツだ
オレがどんなに仕掛けてもあいつの心には響かない
何をしても帰ってくるのは冷たい言葉だけ

あんな女、初めてだ


あ、あいつだ
ショーケースを挟んで向こう側にあいつとメガネをかけたヤツがいる。何か話してネックレスを買ってもらったらしい。その時あいつは笑顔を見せた、作り笑いじゃない笑顔。少し引きつってはいるが、オレには見せない笑顔
ただそれだけなのに腹が立って、話しかけたら、芝居した顔の下に邪魔するなって書いてある気がして、さらに突っ掛かるとメガネの野郎から離された

オレをひっぱるあいつのうなじには銀色に光るネックレスがある。誰に買ってもらったかも、いつ付けたかも知ってたのに、そのことについて尋ねると、嫌な顔をして、仕方ないんだよって言われた。


 仕方ないって…



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