【完】無知な彼女の周り


出てきたご飯は贅沢な会席料理で、こんなの学生が食べていいのかって思うくらい立派なもので、おいしくいただいた。

「はーおいしかった」

「ねぇ、今からどうする?」

「夜景でも見に行くか」

なんか、話は進み、旅館の上階にあるテラスから、田舎ならではの夜景を見に行こうってことらしい

夜景かぁ、誰かチューしないかなー

うーん、今のとこ、目に見えて主人公は誰が好きってわけでもない。そんでもって、王子様らも主人公のこと、大好きって言うような感じはない

なんだ、話し全然進んでないじゃないか

上階に着くと、あるのはソファーと自販機だけで、テラスに出るとそこには満天の星空が夜空に広がっていた

「うわーきれいだなぁ」

「ロマンチックー」

みんな夜空に夢中になって、自分の世界に入ってしまったようだ。

私は何も言わずただ、星を眺めてた

「おい、口開いてる」

だれだよ、そんなこと言うのは、って思いながら隣を見ると誠だった…

「ねぇ、どうやったら進むかなぁ」

「…何の話?」

このありきたりな物語の話。いえないのは分かってるが、こいつも部外者だ。ヒントくらいくれたっていいのに

「まぁ、気にしなくても進むんじゃねーの?」

「…何の話してるか分かってる?」

「いいや、分かんねぇ」

あはは、叩いてやろうか…

「オレらってさ、恋人同士ぽくないよね」

「いいんじゃない?フリだから」

「オレさ、完ぺき主義なんだよね」

「うん、聞いた」

なんか、話題変えたって思えば、たぶんケチつけてきた

「だからさ…キスぐらいしよっか」

「すればいいじゃない」

ロマンチック気取りのつもりなんだろうか、とにかく、チューなんてどうでもいい私は、誠の正面に立った

「はい」

「そんなに堂々とされると、こっちが困る」

「知らないよ」

ゆっくりゆっくり顔をちがづけてくる

そのとき、テラスの扉が開く音がして、誠がそっちに気を取られて、向こうをむいてしまったから、首に手を回し、自分からキスをした



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