【完】無知な彼女の周り
もともと私はあのメガネのデートを断わるための理由が欲しかっただけ。だから、彼に好意を抱いたこともないし、彼を仮彼氏にしたのだってその場にいた他人だからってだけ。
だから好きなもの同士、今更くっついたって、どうとも思わない。
「あんたも好かれてる人と一緒にいたほうが幸せでしょ」
「おまえ、なに言ってんだよ」
「正論だよ。愛されてるほうがいいに決まってるよ」
「…じゃあ、お前はオレの事好きじゃないのか?」
「もちろん」
どうやらこの一言がいけなかったらしい。
急に誠は黙ってしまい、少しの間沈黙が流れる。その沈黙の意味が分からず、私は、
「どうした?明日さ、彼女さん連れて一緒に帰ろうよ、みんなで。そのときから私達は他人でいいじゃない。いろいろ利用して悪かったね」
知り合ってたいした時間はたってないけど、いろいろ迷惑かけた気がする。
「だから今日はもう寝よう?」
なるべく優しい口調で言ったつもり。すると、誠は急に笑い出した。
び、びっくりした…
「あははは、そうだよな、オレたちは偽カップルだもんな。恋愛感情持つわけないよな
。利用してただけだよな…
お前の言うとおりそうするよ。明日、明日香を誘ってみる」
「うん、そうしたほうがいいよ」
そういって私は布団にもぐった。だって、あの笑った誠の顔は、貼りついた笑顔と、その下にある隠し切れないつらそうな素顔をずっと見れる気になれなかった。いや、見れなかったんだと思う
だって彼をあんな顔にされたのは、間違いなく私。
しかし、その理由が分からない。