【完】無知な彼女の周り
そんなことがあった次の日。朝起きると、部屋にはもう誠はいなかった。今は9時、確かここを出るのは10時だ。早く仕度しないと置いていかれてしまう。
「…この一泊は長かったな…」
この温泉旅行はいろんなことがありすぎた。展開的には何の進展もなかったが、温泉のありきたりだって実際に見れた。あの少女Aに感謝しないと。
それに、誠を愛してくれる人も出てきた。私と似た性格とかいいながら、全然違うよ。誠は愛されてる。私と違ってね。たぶん顔も関係するんだろうな。いいなイケメンは
「遥花ちゃーん、準備できた?もう行くよ?」
ドア越しに可奈子ちゃんの明るい声が聞こえる。
「はぁーい、すぐ行く」
最後に忘れ物はないか確認して、部屋を出ると、
「おはよう」
そこには誠を含めた全員がいた。挨拶してきたのは誠、またあの張り付いた笑顔だ。でもその下のつらそうな顔は見えない。よかった、落ち込んではないようだ。
「あれ?明日香ちゃんは?」
私がそう聞くと、ロビーで待ってる。と言われた。でもこれってありきたりじゃないよね。まぁ、部外者は関係ないのか
そしてわいわい騒ぎながらロビーに下りた。
「まっことー!」
ハイテンションで誠に抱きつくのは、明日香ちゃん。どうやら、寄りが戻って頭がおかしくなったようだ。って言えば失礼か。
「ホントうれしいわ!私を選んでくれるなんて!」
ハイテンションのまま大声で言葉を続ける。その後チラッとこっちを見てきた。優越感に浸った目だ。それに言葉をつけるなら、“フフン残念ね。あなたは私に負けたのよ、誠が好きなのは私に決まってるんだから”って感じ。…この子もなかなかのありきたり。第一、私と誠は恋人のフリをした他人だから。その優越感は勘違いです。
「…ねぇ、遥花ちゃんいいの?」
「いいの。もう別れたんだから」
「…え?」
隣にいた冬紀が話しかけてくる。この子は本当に心配性だな…気にしたって仕方ないだろうに
「さぁ、みんな電車が来るよ」
歩きながら話していたせいかもう駅のホームについた。
この旅ももうすぐ終わる。