【完】無知な彼女の周り
□逃げ道
電車にはまばらにしか人はいなくて、私たちは適当に乗り込む

離れて座るあのカップルと、そのずっと離れたところに私たちが座る。2人席の私の隣には、可奈子ちゃん。ちなみに通路を挟んだ隣には王子様が席をひっくり返し4人シートにして、楽しそうに会話をしている。

「遥花ちゃん、ホントにこれでよかったの?」

可奈子ちゃんが遠慮気味に聞いてきた

「うん、いいのよ」

何も気にすることじゃない。最初からなんともないんだから。むしろ、散々世話になったお返しとはいえないが、誠はこれで幸せに慣れる。

「誠もね、愛されたほうがいいの」

そういうと、可奈子ちゃんは少し驚いた顔をした。

そして、

「それってどういうこと?」

と聞いてくるのに少し時間がかかっていた。

「彼女さんによりを戻したいって言われたんだって。だから、私と別れて彼女の元へ行くようにいったの。だって愛してくれる人がいるならそっちに行ったほうが幸せでしょ?」

すると可奈子ちゃんは私の目を見て

「こんな事いうのはどうかと思うけど、遥花ちゃん、その言い方だとまるで遥花ちゃんは誠君を好きじゃなかったみたいに聞こえるの…」

確かに誠のことは好きじゃなかった。だって始まりは、デートを断わるために利用しただけ。その場で終わるはずだったけど、そうはいかなくて、今さっきまで続いた関係だっただけ。好きなんて感情はなかった。
でも、そんなことはいえないよ。だから話をごまかすしか選択肢はない。

「私のことはいいから、可奈子ちゃんは好きな人いないの?」

「えー、前にも聞かれたけど、居ないってば」

良かったうまくのってくれた。でも、居ないのか…告白されてはじめて気付くパターンだとすると、この物語はまだまだ終わらないなぁ

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