【完】無知な彼女の周り
□ごめんなさい
夜行バスに乗り、携帯の電源を落とした。
長い長い夜がすぎていくが、一切寝れなかった。
自分は物語には必要じゃなかった。私がいなければ、可奈子ちゃんの勘違いも、冬紀のつらそうな顔も、起きるはずはなかったのに
「皆、私がいなくなったことに気付くかな?」
たぶん皆は私のことなんてこの土日ですっかり忘れてる。
それがいい。そうしたら元のありきたりに戻るんだから
でももし、可奈子ちゃんが言った事が本当だったら?
私が、あのありきたりな物語の主人公だったら?
私が彼らの好意を無視し続けていたなら?
だったら私はどれだけ、彼らを傷つけていたのだろう。
そしたら私は、どこまでも最低な女なのだろう。
ごめんなさい
そう思うと涙があふれて、声も上げずに静かに泣いた。
たとえば。で済めばよかった
でも、思い当たるふしが多すぎた
そう、何も知らなくて、彼らを傷つけたのは私だった
無知なのは
私だった。