かたっぽうの恋

「あ、あの。えっと…」


だめだ。言葉が出てこない。
急に好きなんて、そういう意味じゃないのわかってるのに！


顔が熱い！


「なに慌ててんだよ、褒めてんのに」


「あ、慌ててなんかない」


「うわ、いじっぱり！」



「うっ、ひどい。」



わざわざ先生が挑発するから言い返したくなるんだよ。




でも、素直に「好き」と言ってくれた事を喜べたら、可愛かったんだな。

言ってみようかな。と思ったら頭をくしゃっと撫でられた。




「…俺が悪かったよ。」


「え…」



一歩ひいた大人な態度の先生に、距離を感じた。



「違っ…、私が勝手に」



その時。先生のジャージのポケットの中で携帯が鳴り響いた。

先生は「ごめん」と言って携帯を取り通話ボタンに指を置いた。


「もしも…」



先生が言い切る前に、通話口から







《理一！さっきは急に切りやがって！》


「っうわ!?」


「え!?」


お兄ちゃんの怒鳴り声が飛び出した。


先生は、「あ。忘れてた」って渋い顔をして小さくお辞儀をした。


「……あ、さっきはすみません。」


まさかの敬語。


さっきって、何かあったのかな。


先生は携帯でお兄ちゃんと話しながら何度も謝り頭を下げていて、何気にお兄ちゃんには腰が低いんだなって思った。


すると。



「…あぁ。眞央ちゃんとデートしてたから」


ふらっと、気が遠くなった。



《デートだとぉぉお!!!!》


先生の携帯からお兄ちゃんの叫びが聞こえた。


そんなお兄ちゃんに先生は「あはははは！」と大笑い。




私は、先生の携帯を取り上げようと手を伸ばす。


が、しかし！



簡単に妨害された。



先生に口をガシッと手で塞がれた私は先生の腕の中でバタバタ暴れる。


「んーんーんー！」


「今から帰るから、
あ！泊まらせて」


《ハァァ!?》





（ピ…）





先生は携帯を切った。