かたっぽうの恋
「…これでよし!」




「よしじゃなーい!」





グッドと親指を立てる先生の腕の中から私は叫ぶ。




綺麗な夜空の下で、私は先生の腕の中で声を張り上げた。


「あんな言い方するなんて、お兄ちゃんが心配するじゃない!!」


口だけはよく動く。


「大丈夫ってば。俺 修に信用されてるんだから」



その自信がどのあたりで
生まれたのか聞きたいものね。






「もういいですから、離してください。」




「………」





まったく、なんだかんだてふざけてばっかり。大学生って言っても中身は子供だよね。









………ん? あれ。



後ろから抱きしめられたまま、先生…離れてくれない。





「先生。いつまで抱き着いてるの?」



…………。






「せ、せんせ…?――あの」





先生の匂いかな。ふんわりとシトラスの香りがする。



先生の腕が私を強く。だけど優しく締め付け、私の体は先生へと引き寄せられる。



先生の息が首筋に触れて、身体が熱くて。じんわり涙が出る。



でも、嫌じゃない……。
とても、あったかい。

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