かたっぽうの恋
オリエンテーションを終え、
俺はなぜか、実習への不安で
気持ちがいっぱいだった。


とにかく、家に帰って休もう、

保健室を出て、廊下を歩いていた時だった。




―――どすんっ


「きゃっ!」


曲がり角から出てきた人とぶつかり、
体に衝撃が走った。


「うわっ!―――あっ!」



俺とぶつかったのは、






顔を上げると、
守らせてほしくなる、
なんとも愛くるしい容姿。




「すみませんでした」



ずっと会いたいと願っていた
岸本 眞央ちゃんだった。


うわ、うわっうわうわ!
やっぱ犬みてーだ。


しかし眞央は、俺と目も合わさないで、
お辞儀してさっさと階段を上っていってしまった。





ぽつん、と
一人残された俺は 眞央の後ろ姿に見とれたまま。







実習がんばろう。





そう―――、誓った。
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