かたっぽうの恋
でもまぁ、今日のスケジュールは上手く進み
質問すれば真面目に藤原先生も答えてくれるし。
ちゃんとした先生なんだってわかった。
保健室にはやたら女子がやってくる、
この先生、かなり人気があるみたいだ。
休み時間や昼休み、
放課後にも女子が三人。
「うわ、新しい先生がいる!」
「まじかよ!、わっイケメンじゃん」
いまどきのギャルだな。
つか香水くさあ…。
「こんにちは、実習の吾妻です」
一応、実習の身だ。
気に入られとくほうがいい、
モデルで鍛えたスマイルをかました。
するとギャルたちは、
頬をチークよりも赤く染め、
一瞬ぶるっと震えた。
「やべ、萌えた!」
「私もっ、超かっこいいですね」
「吾妻先生、下の名前なんなのー?」
いつの間にかギャルたちに囲まれ、ベタベタされる、いつもなら逃げるのに逃げれねえ。
もう、くさーい。
「おめぇらなぁ、吾妻は仕事やんねんから、邪魔やき。
元気ならはよぅ帰り。」
藤原先生がギャルたちを保健室から追い出す。
もちろんギャルたちはブーイングだ。
「薫ちゃんのケチ!」
「若い先生にヤキモキ妬いたんじゃない?」
「うちらが吾妻先生ラブったから」
最近の高校生って、恥ずかしい事平気に言うね。
すると、藤原先生は
口の端を上げ、にやりとした。
「―――吾妻くんは、俺のやで。」
………え?
「ほなね~」
藤原先生がドアを閉めていく。
魂が抜けていくような、
ムンクの叫びのような表情をした
ギャルたちを残して。
そのドアのガラスに写った俺自身も、同じ表情をしていた。