かたっぽうの恋
「……エンジン切っとこう。」


ずっと車内に流れていたFM音楽が、エンジン音と共になくなって、俺の呼吸と河川敷から聞こえる牛蛙の鳴き声しか聞こえなくなった。




走っていく眞央を俺は車の中で見つめた。


このまま、どんどん小さくなって 最後は見えなくなってしまうまで見送ろうと思った。


ずっと見つめる走っていく眞央。
走るのおっそいなあ。





そんな事で笑えて、可愛く思う。






しかし走っていく目的を考えたら 可愛さ余って憎さ百倍だ。



俺は眞央の背中に向かって、手でピストルを作り 構えた。





「このピストルの球が当たって、眞央が止まったら俺は告る。」



子供のころによくやった、まじない。




止まるはずはない、答えはわかってる。でも





――止まれ!!





「バンッ!!!」




――――――――


―――――






――なに、ウソ…










マジで?









眞央が、立ち止まった。



「ンモー…」



「本当、もう…参ったよ。ハハ…ハ」



夜風吹く 河の畔で響くは 牛蛙の音色。
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