かたっぽうの恋

はあ。
こんな質問で真っ赤かになるようなジャリが、俺のライバルだと思うと 妙な虚しさを感じるよ。



「あの、先生?」



二宮の声で、自分の世界に入り込んでる事に気がついて ハッとする。



「あ、あぁ。月島なら岸本といるよ」


俺が指差す土手の方を見る二宮。


「あ」


土手にいる二人の姿を目にして、ホッとする二宮を横目に少しイライラ気味の俺。




なに呑気に笑ってんだよ。お前が原因だっつの。




そんな俺に戸惑い、首を傾げる二宮は「ありがとうございます」と頭を下げる。



「いや。いいよ」


礼儀正しくされると。精神的に負けた気分になる。



なにイライラしてんだよ、俺ってガキ?
もっと余裕に構えていたいのに…。



俺は冷静に振る舞おうとした。



「―――二宮くん。あ…。



だが。すでに俺に背中を向け、土手に行こうとしてる二宮を慌てて止める。



「待って待って、今は行かない方がいいよ」

二宮は「なぜ?」って顔。




「いや、なんか岸本と大事な話してるんだよ。」


「岸本と、ですか」


へえ、と何やら嬉しそうな二宮。その意味が気になりながら俺は二宮に背を向け、自販機のチカチカとする光に近づく。



「なんか飲むう?おごるぜ。」


「いいんですか!? いただきます。」


なんかテンション上がってる。

つか眞央もそうだよな。最近の高校生って飲み物ぐらいで喜ぶのか。





俺は、良い時間まで二宮を引き止めつつ、色々聞いてみよう。なんて考えていた。



俺は、たしかな答えが欲しかったんだ。いつまでも 「もしかしたら」の理想じゃなく。


二宮の気持ちと言う、なによりも重要な答えが知りたい。







――二宮は誰が好きなの?

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