かたっぽうの恋


その日、先生はお兄ちゃんの部屋に泊まることになった。リビングで両親と挨拶をして、人当たりが良いのか数分で打ち解け合った。


そして、私がお風呂から出てくると なぜかリビングには先生だけがいて、ソファーに座っていた。


「ん?」と私に気がついて振り向いた先生は「よ!」っと気さくに挨拶してくれて。



私はパジャマ姿も気にしないで先生に近づいた。



「お兄ちゃんたちは?」


「ご両親は二階、もう寝るって。修はなんか、DVDの返却日が今日だから~って慌てて出かけたよ。」


「お兄ちゃんまたやっちゃったの~」


お兄ちゃん、そういうの抜けてるんだよね。


「ドジだね」と笑ってる私を見て先生はなぜか苦笑している。


「どうかしたの?」


「いや、そのパジャマ可愛いなと思って」


――えっ!



この水玉柄のパジャマが!
このパジャマは中学から持ってるお気に入りなんだよね。



「そ、そんな可愛いだなんて」

「うん。色気ゼロだな」



ぴしっと、なにかにヒビが入ったような音がした。




「パ、パジャマだからいいんだよ」


「うん。眞央らしくて良いな」


ぴしっ!!



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