かたっぽうの恋
「やめてよ!、布団離してよ、
お兄ちゃん!」
私、岸本 眞央から布団を取り上げようとするのは兄
岸本 修(おさむ)20歳。
大学三年。
「やめてよじゃないだろ。一週間も部屋から出てこねーし、父さんも母さんも心配してるんだぞ?いいかげんにっ、てか布団離しなさい!」
取り上げられかけた布団を、私はそうはさせないとばかりに掴み引っ張る。
「……」
「…ま~おっ!高校で嫌な事とかあったんじゃないのか?」
ぐいっ!!
「…お兄ちゃんに関係ないでしょ!!」
ぐいっ!!
「関係ない!!……なにを言ってるんだ、可愛い妹が不登校になって……心配しない兄がいると思うか!?」
……。
「お兄ちゃん、お前が学校でなにかあったのか心配なんだよ」
ぐいー!!
「…ひゃっ!なんのこれしきっ!!」
「…なっ!……今回のお兄ちゃんは優しくないぞっ、うらあ!」
おもいっきり布団を引っ張られて、私から布団が離れた。
渋味のある畳みの上に兄が布団を無造作に落とした。
「うっ、うぅ…」
暖かかった布団が私のもとから消えた瞬間。
溜まっていた。私の涙が一気にあふれだした。
――だって、嫌なんだもん。